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その他情報

無線方式について

リアルタイム位置情報システム(RTLS)で用いられる無線方式

 

近年、AIやIoTデバイスの進化により、製造・物流・医療・小売・公共施設・エンターテイメントなど、さまざまな分野で人や物の動きをリアルタイムに把握し、最適化するリアルタイム位置情報システム(RTLS)の活用が進んでいます。
特に屋内環境では、床や壁、什器などの障害物による無線信号の反射や減衰しながら伝搬するマルチパスフェージングが発生し、位置精度が低下するという課題があります。そのため、RTLSの構築には使用環境や求められる精度、コストなどを考慮した無線方式・デバイスの選定が重要です。ここでは代表的な無線方式についてご紹介します。

無線通信技術の比較
  UWB 無線LAN BLE RFID
測位方式 ToF / AoA RSSI / Wi-Fi RTT RSSI / AoA / AoD パッシブ / アクティブ
測位精度 数十cm 数m~数十m 数m/数十cm~数m 数cm~数十cm / 数m
通信範囲 数十m 数百m 十数m 数cm~数十cm / 数m
端末側消費電力 小さい 大きい 小さい 不要 / 小さい
モジュールコスト 高価 中位 高価/安価 高価 / 安価

UWB(Ultra-Wideband)

UWBは、非常に短いパルス信号を用いた広帯域通信(500MHz以上)で、低消費電力かつ高精度な位置推定が可能です。屋内環境でもマルチパスフェージングや妨害波の影響を受けにくく、数十cm単位の精度で位置測定が可能とされます。主な測位技術として、デバイス間の通信時間を測定するToF(Time of Flight)や、信号の到来角を算出するAoA(Angle of Arrival)などがあります。近年ではApple製品にもUWB機能が搭載され、実用化が進んでいます。ただし、デバイス価格が高く、システム全体のコストが課題となる場合があります。

図1:UWB信号は反射波の影響を受けにくく、高精度な位置推定が可能です。

無線LAN(Wi-Fi)

無線LANはスマートフォンやノートパソコンなどで広く利用されており、既存のアクセスポイント(AP)を活用できる点が特徴です。APと端末間の受信信号強度(RSSI)から距離を推定するほか、IEEE 802.11mc規格のWi-Fi RTT(Round Trip Time)技術により、数メートル単位の位置精度が実現可能とされます。ただし、広範囲で高精度な測位を行うには多くのAPが必要となり、普及には課題があります。

図2:Wi-Fi RTT方式による端末とAP間の測距シーケンス

Bluetooth LE(BLE)

Bluetooth LEは2.4GHz帯を利用した近距離通信技術で、スマートフォンやウェアラブルデバイスなどに広く搭載されています。ビーコン端末から送信される信号のRSSIをもとに数メートル単位の位置推定が可能です。Bluetooth 5.1以降では、マルチアンテナによるAoA(到来角)やAoD(発信角)技術により、1m以下の高精度測位が実現可能とされます。工場やオフィスなどでの導入が進んでいますが、障害物によるマルチパスの影響や、マルチアンテナのコストが課題となる場合があります。また、2.4GHz帯は他の機器と干渉する可能性があるため、使用環境に注意が必要です。

図3:BLEのAoA方式では複数アンテナで到来角を推定し、AoD方式では発信角情報を利用します。

RFIDタグ

パッシブ型RFIDタグは、リーダライタからの信号をエネルギー源として非接触通信を行い、入退室管理や搬送物の位置把握などに利用されています。アクティブ型RFIDタグは電池を搭載し、数メートル範囲で通信可能です。弊社グループでは、微弱無線を活用したアクティブタグによるRTLS(リアルタイム位置情報システム)を長年にわたり取り扱っており運用しており、豊富な導入実績を有しております。アクティブタグは小型・軽量・安価で、多数の人や物への取り付けが容易です。位置精度は数m単位ですが、システムコストを低く抑えられる利点があります。また、他の機器への妨害影響が小さいため、医療現場など高い信頼性が求められる場面でも活用されています。

図4:社員食堂の混雑状況モニタなどにも活用されています。
RTLSで用いられる無線方式の比較
無線方式 位置精度 コスト 主な用途・運用シーン
UWB 数十cm 高い 高精度測位、工場・医療現場
無線LAN 数m 既存設備活用 オフィス・商業施設
Bluetooth LE 1m未満~数m 中程度 工場・オフィス・イベント
RFIDタグ 数m 低い 入退室管理、搬送物追跡
    

   

主要無線方式の運用シーン・運用例
無線方式 運用シーン 運用例
UWB

移動体の正確な位置検知

(フォークリフト、人)

製造現場でのフォークリフトなどの動態検知、作業者の工数管理
無線LAN スマホや医療機器などWi-Fi搭載機器の所在管理 大型施設での所在管理やルート案内、医療機器の所在管理
BLE 移動体の正確な位置検知(モノや人) 製造現場での正確な製品の所在、作業者の工数管理
パッシブ型RFID 物品の大まかな位置検知 製造現場での製品・材料の混入・工程間移動を管理
アクティブ型RFID 人や物品の大まかな位置検知 オフィス・製造現場で従業員および物品を管理